前の記事で、妻に先立たれた場合、夫への公的補助は子供がいるかや夫の年齢、
妻が働いていたかで変わるっていうことだったけど、夫に先立たれた場合の妻への公的補助も同じ内容や条件なのかな?
夫と妻のどちらかが亡くなった場合、公的補助は妻の方が優遇されているって話だったよね
はい、配偶者と死別した場合の公的補助は、現在では女性の方が優遇されています。
また、国からの補助のほかに、会社からの見舞金がある場合もあります。
どんなものがあるのかを調べてみました。
- 夫に先立たれた場合に妻がもらえる遺族年金について知りたい
- 金額や条件、いつまでもらえるかが知りたい
- 公的補助にどんなものがあるのかを知りたい
- 夫婦ともに元気だが、万が一に備えて子供のために生命保険に入ろうか悩んでいる。まずは国からの補助がどれくらいあるのかをまずは知りたい
夫に先立たれた場合、どんな補償・補助がある?
夫に先立たれた場合、国や会社から出る補助は主に下記のようなものがあります。
- 遺族年金(二か月に一回現金が支給)
- 寡婦年金☆ or 死亡一時金(遺族基礎年金がもらえない場合にもらえる)
- 中高齢寡婦加算☆(遺族厚生年金がもらえいない場合にもらえる)
- 遺族補償年金 or 遺族補償一時金(業務が原因の病気・ケガでの死亡の場合もらえる)
- 寡婦控除☆ or ひとり親控除(年末調整 or 確定申告で税金が安くなる)
- 葬祭費 or 埋葬費(葬儀・埋葬費用を1~7万円程度補助)
- 慶弔見舞金(亡くなった時に夫 or 妻、あるいは両方の会社から支給)※支給の有無は会社による
男性よりも多い!
☆のついているものは男性にはないよね
はい。ただし、支給にはそれぞれ条件があります。
遺族年金
遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の二種類があり、条件を満たせば両方もらうことができます。
子供がいるともらえる:遺族基礎年金
遺族基礎年金は、子供がいることがポイントです。いないと受給することができません。
また、下記の条件をいずれも満たすことが条件です。
もらえる金額
780,900円 + 子の加算額 ※
※子の加算額…第一子、第二子は各224,700円、第三子以降は各74,900円
受給できる人
- 亡くなった人によって生計を維持していた子のある配偶者(扶養されていた事とは別。具体的には受給者の年収が850万円以下であること)、または子
- 子が下記の要件にあてはまる
- ①18歳到達年度の末日(18歳なって最初の3月31日)までの子
- ②20歳未満で障害等1級または2級に該当する子
- 子供が①、②に当てはまらなくなった場合は支給が停止される
(その時妻が60~65歳の場合は寡婦年金が受給できる)
受給要件
- 年金の保険料納付済期間 + 保険料免除期間が全保険者期間の2/3以上
※ただし、上記の要件を満たさない場合は特例として直近1年間に保険料の滞納がなければOK
申請先
近くの年金事務所、または年金相談センター
つまり、妻が働いていても、妻の年収が850万以下であれば
18歳以下の子供が2人いる場合は780,900+(224,700)×2で
年間約123万円もらうことができるんだね
夫が会社員だった場合もらえる:遺族厚生年金
遺族厚生年金は亡くなった人が会社員で厚生年金に加入していた場合、基礎年金に上乗せしてもらうことができます。
もらえる金額
- 本来もらえるはずだった厚生年金の3/4程度
受給できる人
- 亡くなった人によって生計を維持されていた下記の人
(扶養されていた事とは別。具体的には受給者(妻)の年収が850万円以下であること) - ①妻・夫※・子※※、②父母※、③孫※※、④祖父母※ の順に受給資格有り
- 30歳未満の子のない妻の受給期間は5年のみ
- 妻が30歳以上の場合は一生涯もらえる
※夫、父母、祖父母が受給者の場合は、厚生年金加入者が死亡時に自身が55歳以上であることが条件。
また、年金を受け取ることができるのは60歳から。
ただし、55歳以上で子供がいる(遺族基礎年金を受け取っている)場合は遺族厚生年金もすぐに受給できる
※※子、孫の場合は18歳到達の年度末 (18歳なって最初の3月31日) までの場合、または障害等級1,2級で20歳未満の場合
申請先
近くの年金事務所、または年金相談センター
妻がなくなった場合は夫が54歳以下だったら遺族厚生年金はもらえなかったけど
夫が亡くなった場合は妻は何歳であってももらうことができるんだね
しかも夫の場合は55歳だったとしても受給資格が発生するだけで
もらえるのは60歳からだったよね
それを考えると女性はかなり手厚いね
はい、ただし子供がいない30歳未満の女性の場合は5年間しか受給期間がないので注意しましょう。
遺族年金まとめ
遺族年金はまとめると下記のようになります。
妻が30歳以上かと、子供がいるかで変わるんだね
遺族厚生年金は夫が会社員だった場合だから
夫が自営業で子供がいなかったら、
妻は遺族基礎年金も遺族厚生年金も両方受給できないんだね
自営業で子供がいない人は:寡婦年金 or 死亡一時金
うーん、子供がいない場合、遺族基礎年金は受け取れないんだね
夫が自営業だった場合、更に遺族厚生年金も受け取れないのは厳しい
はい。ただし、その場合は寡婦年金か死亡一時金のどちらかを受給することでできます。
妻が60歳~65歳未満なら:寡婦年金
寡婦年金は、自営業の夫が年金を納めていたのに、もらわずに亡くなってしまった場合に、妻がもらうことができます。
もらえる金額
- 本来もらえるはずだった基礎年金の3/4程度
- 受給は60~65歳の間だけ
受給できる人
- 自営業・フリーランスの夫(国民年金加入者)を亡くした、18歳未満の子供(障害がある場合は20歳未満)がいない60~65歳の妻
- 遺族基礎年金を受給していた人でも、妻が60歳になるまでに子供が18歳以上になって支給が停止すればその後寡婦年金を受給することができる
受給要件
- 夫と10年以上の婚姻関係がある(事実婚を含む)
- 夫が国民年金の支払い(免除期間含む)を10年以上しており、まだ年金を受け取ったことがなかった
- 妻自身が年金の繰り上げ受給や再婚をしていない
申請先
近くの年金事務所、または年金相談センター
妻が60歳未満なら:死亡一時金
死亡一時金は、自営業の人が年金を納めていたのにもらわずに亡くなってしまった場合に、遺族がもらうことができます。
もらえる金額
- 保険料を納めた期間に応じて12~32万円
受給できる人
- 自営業・フリーランス(国民年金加入者)で36か月以上保険料を納めた人が、年金を受給せずに亡くなった場合の遺族
- 優先順位は配偶者→ 子→ 父母→ 孫→ 祖父母→ 兄弟姉妹の順
受給要件
- 遺族基礎年金の受給資格がない
申請先
近くの年金事務所、または年金相談センター
旦那さんがフリーランスや自営業で子供がいない場合は
寡婦年金か死亡一時金がもらえるんだね
どちらか一方を選択ということだから
受給額が多い方を選びたいね
夫が会社員で子供がいない人は:中高齢寡婦加算
夫が自営業で子供がいない場合は寡婦年金か死亡一時金が
もらえるってことだけど、夫が会社員だった場合にはこういう制度ないのかな?
遺族厚生年金がもらえるからないんじゃない?
あります!それが子供がいない or 子供が18歳以上になった時にもらえる中高齢寡婦加算です
中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算は、会社員(厚生年金加入者)の夫が亡くなった場合、独り身の妻に支給されるものです。
もらえる金額
- 58万5,700円(※令和3年度)
受給できる人
厚生年金に加入していた夫を亡くした妻で、以下のいずれかにあてはまる人
- 夫の死亡時に40歳~65歳未満で、生計を同じくしている子がいない
- 遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給していたが、子が18歳(障害者の場合は20歳)になり、遺族基礎年金を受給できなくなった
受給要件
- 受給できるのは妻が65歳になるまで
- 支給額は厚生年金の加入期間や収入に関わらず一律
申請先
近くの年金事務所、または年金相談センター
業務が原因のケガ・病気で死亡した場合:遺族補償給付
遺族補償給付とは、業務災害により死亡した労働者の遺族に支給される給付です。
遺族補償給付には次の二種類があります。
- 遺族補償年金:被災労働者死亡時に生計を一にしており、受給要件にあてはまる遺族がいる場合
- 遺族補償一時金:上記の受給要件に誰もあてはまらず、なおかつ遺族がいる場合
遺族補償年金
遺族補償年金は、労働者が業務災害により死亡した場合に遺族に給付される年金で、妻なら必ずもらうことができます(男性は条件有り)。
もらえる金額
給付される金額は、遺族数(受給者と生計を同じくしている受給資格者の数)によって変わります。
例えば、受給者が妻で子供が2人いる場合は遺族の数は3人ということになります。
遺族の数 | 遺族補償年金額 |
1人 | 給付基礎日額※の153日分※※ |
2人 | 給付基礎日額※の201日分 |
3人 | 給付基礎日額※の223日分 |
4人 | 給付基礎日額※の245日分 |
※給付基礎日額 = 負傷や死亡が原因となった事故が発生した日の直前3か月間に、その労働者に対して払われた賃金の総額(ボーナスなどは除く)を暦日数で割った額を指す
※※妻が55歳以上、または一定の障害状況にある場合は175日分
亡くなった夫の1日の平均賃金が15,000円だったとして、
妻と子供2人が遺族だとしたら
15,000×223=334.5万円が毎年もらえるんだね
受給できる人
遺族補償年金の受給資格者となるのは、被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた人になります。
- ①妻、または60歳以上か一定の障害のある夫
- ②18歳になって最初の3月31日を迎えていないか、一定の障害のある子
- ③60歳以上か一定の障害のある父母
- ④18歳になって最初の3月31日を迎えていないか、一定の障害のある孫
- ⑤60歳以上か一定の障害のある祖父母
- ⑥18歳になって最初の3月31日を迎えていないか、一定の障害のある兄弟姉妹
※受給資格は①⇒ ②⇒ ③⇒ ④⇒ ⑤⇒ ⑥の順
※上記の条件にあてはまらなくても、夫、父母、祖父母、兄弟姉妹は55歳~60歳未満であれば受給資格が得られる。ただし、受給は60歳から
受給要件
5年で時効なのでそれまでに請求が必要
申請先
労働基準監督署
遺族補償一時金
遺族補償一時金は、 遺族補償年金の受給要件に誰もあてはまらず、なおかつ遺族がいる場合にもらえる一時金です。
たとえば、55歳未満の夫などが当てはまります。 ただし、妻の場合は遺族補償年金がもらえるため遺族補償一時金を請求することはないでしょう。
税金が安くなる:寡婦控除 or ひとり親控除
いろんな制度があるんだね
そういえば節税の記事のところでもあったけど
お金を支給されるだけじゃなくて、税金を安くなる制度もあったよね
はい、夫に先立たれた場合は、「寡婦控除」か「ひとり親控除」という税金が安くなる制度もあります。
寡婦控除
控除額
- 27万円
条件
- 自分(妻)の合計所得金額が500万円(年収約670万円)以下
- 下記のいずれかにあてはまる
- ①夫と死別後再婚していない
- ②夫と離婚後再婚しておらず、扶養親族を有する者
申請方法
- 年末調整 or 確定申告で申告(毎年)
ひとり親控除
控除額
- 35万円
条件
- 自分(妻)の合計所得金額が500万円(年収約670万円)以下
- 現在婚姻していない者(事実婚などもダメ)
- 総所得金額等の合計額が48万円(収入103万円)以下の子があること
申請方法
- 年末調整 or 確定申告で申告(毎年)
なお、寡婦控除にもひとり親控除にあてはある場合は、より控除額の大きいひとり親控除が優先されます(二つ同時にはうけられない)
年末調整の場合
会社員の場合は年末調整の申告書で「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」のカテゴリーの「ひとり親」にチェックをつければOK。(寡婦控除を申請する場合は「寡婦」にチェック)
確定申告の場合
自営業やフリーランス、会社員でも副業などをしていたりして確定申告をする場合は、確定申告書A、またはBの1枚目「寡婦、ひとり親控除」の欄に350,000と記入。(寡婦控除を申請する場合は270,000と記入)
また、2枚目の「本人に関する事項」の「ひとり親」にも〇をつける。
年末調整や確定申告で申請できる控除については下記の記事でも紹介しているので、寡婦控除やひとり親控除だけでなくあてはまる控除は必ず全て申請しましょう。
申請するかしないかで税金の支払い額が数万円~数十万円変わることもありえます。
年末調整や確定申告であてはまる控除を申請することで
税金が安くなるんだね
埋葬には補助が出る:葬祭費 or 埋葬料
葬祭費、または埋葬費は亡くなった方を埋葬する際に1~7万円程度補助が出る制度です。
なんで二つあるの?
どちらが出るかは、故人が加入していた健康保険によって変わるからです。
葬祭費
夫が国民健康保険に加入していた(自営業・フリーランスだった)場合、自治体から1~7万円が支給される
※金額は自治体によって異なる
※時効2年
受給できる人:埋葬を行った人
申請先:各自治体
埋葬料
夫が健康保険に加入していた(会社員、妻の扶養に入っていた)場合、健康保険から5万円が支給される
※時効2年
受給できる人:埋葬を行った人
申請先:故人が加入していた健康保険組合
個人が国民年金か厚生年金に加入していれば
葬祭費か埋葬料のどちらかはもらえるんだね
慶弔見舞金(弔慰金)
日本の会社では多くの場合(一説によると八割以上の企業が)、従業員やその家族に祝い事や不幸が起こった場合、慶弔見舞金(弔慰金)を福利厚生として用意しています。
そういえば私も結婚した時に
会社からお祝い金を3万円もらったことがある
制度があるかどうかは会社によりますが、夫も妻も会社員だった場合、どちらかの会社から、あるいは両方の会社から支給されることもあります。
また、一般的に家族が亡くなった場合(この場合は妻の会社)よりも、従業員が亡くなった場合(この場合は夫の会社)からの方が金額が大きいことが多いです。
金額はこちらも会社によりますが、会社によっては従業員が亡くなった場合は数百万の弔慰金が支給されるところもあります。
数百万円はすごいね!
自分の会社にこういう制度があるかどうかは、就業規則・規定等が定めてある箇所に記載があるはずですので、確認してみましょう。
問合せ先:夫 & 妻の会社の人事労務部など
まとめ
まとめると、子供の有無や自分の年齢、生前の夫の働き方によって受けられる補助は変わります。
※妻の年収が高いと遺族基礎年金や寡婦控除、ひとり親控除は受けれない場合あり
※ 子供とは18歳到達年度の末日(18歳になって最初の3月31日)まで、または20歳未満で障害等1級または2級に該当する子を指す
・女性は男性に比べて公的補助が多い
・妻・夫の会社からの保障も確認しよう
まずは正しく知って、自分の状況を把握して、あてはまるものは申請することが大事だね
どれくらい補助があるか把握しておくことで、最適な生命保険に入ることもできるね
はい、その他にも自治体独自の取り組みもあったりしますので、住んでいる地域のHPなどを確認してみましょう。
ひとり親で所得が低い場合は特別給付があったり、無料での電話相談をしているところなどもあったりしますよ。
参考
■参考書籍
■参考サイト