うわーん、この間アルバイトに行く途中に駅の階段から落ちて骨折しちゃったよ
えぇっ、大変だったね!大丈夫?
ケガは大したことないんだけど思ったより治療費かかっちゃったし、しばらくアルバイト休んじゃった。今月金欠なのに…
ちょっと待って!仕事中や通勤時や業務中のケガや業務が原因の病気は、労災保険から治療費が出ます!
労災とは
労災保険、いわゆる「労災」とは正式には「労働者災害補償保険」と言い、業務上や通勤途中における労働者の病気、ケガ、障害、死亡等に対して治療費や療養費を補償してくれる制度です。
でも、そんな保険入った覚えないよ?
労災保険は、原則として一人以上の労働者を使用する事業所は加入が義務付けられていますので、加入は事業主がしています(強制加入)。
保険料も全額事業主負担となりますので、労働者の負担はありません。
派遣社員の場合は、派遣元が加入しています。
労災保険の保険料は会社が全額負担してくれているんだね!
労災を取りたい場合はどうすればいい?
労災を申請したい場合、下記の流れで申請します。
①労働者から会社に労働災害が発生した旨をすみやかに報告する
②会社を通じて労働基準監督署に連絡
③労働基準監督署に必要書類を提出
④労働基準監督署の調査があるので対応
⑤保険金が給付される
まずは会社に報告する必要があるんだね
会社に嫌がられそうじゃない?
労災保険への加入は事業者側の義務であり、労災隠しは犯罪です。
ですので明らかに業務が原因で病気やケガをした場合は会社は対応する義務があります。
ただし、仕事と因果関係があることが証明できる必要があるので、
対象者
労働者ということは、誰かに雇われていないと労災保険は使えないの?
はい、労災保険は雇用されている労働者に対する保険ですので、フリーランスや経営者は対象外となります。
ただし、労働者はすべて対象となるので、正社員はもちろんのこと、派遣社員、アルバイト、パートタイマー、日雇い労働者、外国人等、雇用されている人は原則全て対象となります。
アルバイトや日雇いでも補償されるんだ!知らなかった!
いくら補償されるのか
通勤途中や業務中に負ったケガや病気は完治するまで治療費が全額補償されます(療養補償給付)。
また、ケガや病気が通勤・業務が原因であった場合で会社を休んだ場合は4日目から給与の約80%が支給されます(休業補償給付+休業特別支給金)。
3日間は給与もらえないんだ・・
通勤が原因の場合は3日間は支給がありませんが、業務が原因の場合は1~3日の間は労働基準法26条に基づき、事業主から給与の最低60%が補償されます。
3日は連続して休業しなきゃいけないの?
いいえ、連続3日休業ではなく、通算3日の休業を経て、4日目の休業でも可能です。
申請の仕方
ケガ・病気の治療費について(療養補償給付)
まず、病院で労災保険を使う場合は「労災である」ということを告げましょう。
そうすれば治療費を払う必要はありません(労災指定医療病院の場合)。
また労災の場合は健康保険証は提示する必要がありません。
えぇっ、もう健康保険使って治療受けちゃった
既に健康保険を使用した場合は、下記の2パターンがあります。
パターン1:今から労災に切り替える
かかった病院に、今から労災に切り替えられるかを確認してみましょう。
切り替えられた場合、病院の窓口で支払った金額が変換されます。
パターン2: いったん医療費全額を支払った上で 労災保険に請求する
労災に切り替えができない場合はいったん全額支払い、労災保険の手続きを行います。
また、労災指定病院以外の病院にかかった場合もこちらになります。
①加入している健康保険組合又は協会健保へ労働災害にあい、健康保険証を使用したことを連絡
②返還通知書が届くので、健康保険を使った分の治療費7割を返還する
③病院での領収書と②の領収書を必要書類(様式第7号又は第16号の5)とともに労働基準監督署に提出
めっちゃめんどくさいね
はい、なので労災の場合は早めに病院に「通勤中・業務中にケガをしました!」と伝えましょう。
また、上記にステップを書いていますが、会社に社会保険の問合せ先がある場合はまずはそこに相談してみてもいいかもしれません。
会社を休んだ場合の療養費について(休業補償給付)
通勤中・業務中のケガ、業務が原因の病気で会社を休んだ場合には、労働基準法26条に基づき1~3目までは会社から平均給与の60%が補償されます。
この3日目までについては事業主が休業補償を行う義務がありますので、勤め先に確認しましょう。
休業3日までは会社が補償してくれるんだね
休業4日目からは労災から補償が出ます。
「休業補償給付請求書」の「平均賃金算定内訳の事業主欄」を会社に記入してもらい、医師に労働者が就労不能であることを証明してもらったら、労働者本人が労働基準監督署に提出しましょう。
申請後、労働基準監督署の審査の上、支給・不支給の通知書が届きます。
審査が通っていれば、労災にあった労働者の口座に直接振り込まれます。
仕事で新型コロナウィルスに感染したら労災になるのか
厚生労働省によると、「業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となる」とはっきりと明記してあります。
厚生労働省:新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)
つまり、仕事が原因でコロナにかかったら、治療費は全額補償、給与補償も約60-80%はあるということです。
会社によってはコロナに感染したら休業補償をしているところもありますが、そういう制度がない場合は労災を使えないかを確認してみましょう。
「仕事が原因」ということを証明するところが難しそう…!
とはいえ聞いてみる価値はありそうだね
はい、また、もし労災が使えない場合、健康保険に加入している会社員であれば傷病休暇で休むという手もあります。
この場合、休業して4日目からは健康保険から給与が2/3補償されます。
傷病休暇はこれまでは一度とったらそこから連続して一年半が取得期間でしたが、令和4年1月1日から通算で一年半とれるようになりました。
ですので、たとえば2週間コロナで休んで、復帰し、その一年後に病気などでまた傷病休暇を取るということも可能です。
会社から「労災は使えない」と言われたら
でも、小さい会社とかだと労災使うの嫌がりそうじゃない?
たしかに、バイトだし言いにくいな…。
それに、労災について分かっている人もあんまりいなそうだから聞いても「分からない」って言われそう。
何度も説明しているように、労災保険への加入は事業者側の義務であり、労災隠しは犯罪です。
もし「労災は使えない」「分からない」と言われたら最寄りの労働基準監督署に相談してみましょう。
まとめ
- 労災加入は事業主の義務なので、雇用されている人は全員労災保険に加入している
- まずは勤め先に労災が起きたことを報告する
- 通勤や仕事が原因のケガや病気の治療費は全額補償される
- それが原因で休んだ場合は1~3日目は会社から、4日目は労災から給料の60~80%が補償される
- 労災で病院に行くときには「労災です」と最初に病院に告げると治療費が最初からかからない
- 健康保険証を使った場合は、いったん全額自費で支払った上で労災保険に請求する
万が一通勤中や仕事中にケガをしても安心なんだね!
休んだ場合でも1~3日目からは会社が、4日目からは労災から給料の60~80%補償されるなんて知らなかった!
労災でケガや病気をした場合の治療費・療養費の請求は労働者の権利です。
手続きや申請で悩んだ場合は企業の社会保険を取り扱う部に問い合わせたり、労働基準監督署に相談しましょう。
ただし、帰宅途中に映画を見たり、一杯飲んだりなどの通勤と無関係な時にしたケガは対象となりませんので、お気を付けください。
参考
■参考書籍
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